看護実習知識集

アドヒアランスを理解して看護過程に活かすことができる

アドヒアランスを理解して看護過程に活かす

アドヒアランスを理解して看護過程に活かすことができる

アドヒアランスとは

アドヒアランスという言葉を聞いたことがあると思います。看護学生の間だけではなく、臨床現場に出ている看護師もよく使う言葉です。

2009年コンプライアンスに変わる概念として登場したのがアドヒアランスになります。

患者さんのセルフケア能力を支持し、向上させる関わりをする看護師には重要な概念になります。

きっと看護過程を展開する中でも出てくる概念だと思います。

言葉の定義や使い方をみていきましょう。

 

アドヒアランスとコンプライアンス

アドヒアランス2001年世界保健機構(World Health Organization:WHO)によって推奨された比較的新しい概念であり、

患者が治療の意味を理解して、自らが積極的に治療に参画することを意味します。

以前はコンプライアンスという言葉が使われていましたが、コンプライアンス患者が指示に従っているかどうかというパターナリズムな考え方が先行しており、ノンコンプライアンスの背景にあるのは患者側の怠慢だとも考えられていました。

しかし、現代では患者さんのアドヒアランスが低いのは医療者側の責任であり、患者のアドヒアランスを向上させるような支援が求められています。

 

アドヒアランスをアセスメントする

アドヒアランスが低い状態

それでは患者さんのアドヒアランスが低い状態というのは具体的にどんな事を言うのでしょうか?

アドヒアランスが低い状態

  1. 内服忘れや内服過剰
  2. リハビリの拒否
  3. 安静度が守れない

その他にも色々あがりますが、臨床現場で頻回に出会う症例としては、

薬剤アドヒアランスに関連した患者さんが多い印象です。

 

アドヒアランスが低い状態が持続するとどうなるのか?

アドヒアランスが低い状態が持続するとどのようなことになるのでしょうか。

服薬アドヒアランスが低い状態の患者さんの例として、

 

心不全症例の中では、症状増悪をもたらす要因であり、

死亡および再入院のリスクを増大させることが明らかとなっています。

 

また、統合失調症の場合は、

アドヒアランス低い状態が持続すると再燃だけではなく、

自殺に至る直接的な要因になることが報告されています。

 

アドヒアランスが高い状態が持続するとどうなるのか?

服薬アドヒアランスに関しては、

心不全統合失調症に関しては、アドヒアランスが低い状態が改善することで

症状増悪を予防することや、死亡率自殺率を下げることにつながります。

 

運動アドヒアランスでは、

アドヒアランスが高い状態が維持されることで

痛覚感受性や中枢感作の定量的感覚検査値が低下することが示されており、

慢性疼痛の緩和に運動アドヒアランスの向上が有効であるといわれています。

 

アドヒアランスの向上を妨げる要因をアセスメントする

アドヒアランスの向上を妨げる要因として

アドヒアランス向上を妨げる要因

  1. 患者と医療者の関係
  2. 患者と医療制度の関係
  3. 医療者と医療制度の関係

が挙げられ、患者側の要因、医療者側の要因、医療制度に関する要因が

相互に関係し合っています。詳しい内容をみていきます。

アドヒアランス向上を妨げる要因

アドヒアランスを妨げる要因

文献8より一部改変

 

これらの内容を看護師がしっかりと認識し、アドヒアランスの向上を図るための

支援に繋げていく必要があります。

看護学生はアドヒアランスの向上を妨げる要因を考慮して

患者さんの状況に当てはめていくとアセスメントしやすく、

看護計画にもつなげることができると思います。

アドヒアランスが低い状態を看護過程の中でアセスメントする

それでは看護過程の展開ができるよう具体的なアセスメントに入っていきたいと思います。

アドヒアランスが低い状態というのはアセスメントの中で示していく必要があります。

アドヒアランスが低い状態の中から内服忘れについてアセスメントを考えていきましょう。

 

糖尿病治療薬の中でDPP4阻害薬を処方されている患者さんがいたとします。

糖尿病を基礎疾患にもつAさんは、DPP4阻害薬を毎日内服することが必要ですが、

忘れていること多忙な中で内服できないことがあります。

何が考えられるでしょうか?

アドヒアランスが低い状態

  1. 仕事が忙しくて内服する暇がない
  2. 薬を内服していることを回りに知られたくない
  3. 内服の効果が理解できていない
  4. 薬剤の副作用を気にしてなるべく飲まないようにしている
  5. 糖尿病に対する知識がない
  6. 高血糖の持続による自覚症状がない

等々、様々な要因が考えられると思います。

 

これをアセスメントに落とし込んでいくと

  • 入院前のA氏の状況から内服忘れが頻回にあった要因を考えると、多忙であり内服するタイミングがなかったこと、周囲に薬を内服していることを知られたくないという思いがあること、内服薬の必要性を理解できないことがあげられる。

という形になります。

これが入院前の過去の状況から現在まで

A氏が入院に至った要因につながるアドヒアランスが低い状態を表しています。

 

アドヒアランスを向上させる

米国で行われた研究によると

薬剤投与に関連した入院患者33~69%

ノンアドヒアランスであり、年間約125,000人の人命を

犠牲にしていると推定されています。

 

医療従事者側も様々なアプローチを行っていると推察しますが、

患者さん治療の意味理解して、

治療に積極的に参画する状態まで支援していくこと、

アドヒアランスを向上させることは難しい事だということがわかります。

 

そんな患者さんに看護実習の中で出会ったらどのような支援を考えますか?

アドヒアランスを向上させるためには

アドヒアランスを向上させるための関わりとして、

臨床看護師と同様の視点にはなりますが、

看護学生として何ができるのかを紹介していきたいと思います。

 

アドヒアランスを向上させるための看護方針

  1. 疾患に対し治療が必要だと患者自身が認識すること
  2. 治療薬が安全であると患者自身が認識すること
  3. 症状が治療により改善していると患者自身が実感できること
  4. 看護学生と患者が信頼関係を築くこと
  5. 内服の管理方法を患者自身が評価し、自己管理能力に自信をもてるようになること

④に関しては、看護学生医療者側患者さん信頼関係によって

容易にアドヒアランスは変化すると考えられており、

限られた時間の中で関わる看護学生だけではなく、

病院や地域全体で患者との信頼関係を築き、

全ての医療チームアドヒアランスの向上に努めていく必要があります。

 

全ての項目で必要とされていることは、患者教育という視点になります。

 

アドヒアランスを向上させるための看護方針を参考として

看護計画を考え、看護過程を展開していきましょう。

 

ここまで読んでくれてありがとうございました。

参考文献

1)Tsuchihashi M, et al: Clinical characteristics and prognosis
of hospitalized patients with congestive heart failure – a
study in Fukuoka, Japan. Jpn Circ J 64: 953-959, 2000

2)Wu JR, et al: Medication adherence, depressive symptoms,
and cardiac event-free survival in patients with heart failure. J Card Fail 19: 317-324, 2013

3)本田太一, 服部貴文, 坂野裕洋.医療法人利靖会 前原整形外科リハビリテーションクリニック, 2)神戸学院大学大学院 総合リハビリテーション学研究科, 3)日本福祉大学 健康科学部.PAIN REHABILITATION 12(2): 125-125, 2022

4)常盤雄地, 丹羽祐斗, 堂北絢郁, 大賀智史, 下和弘, 松原貴子.1)尼崎だいもつ病院 リハ技術部, 2)神戸学院大学大学院 総合リハビリテーション学研究科, 3)神戸学院大学 総合リハビリテーション学部.PAIN REHABILITATION 12(2): 163-163, 2022

5)Higashi K, et al.Ther Adv Psychopharmacol, 3:200-218,2013

6)Simone, A. Increased Medication Adherence Reduces Health
Care Costs, Pharmacy Times, 2013.

7)The Real Cost of Patient Non-Adherence, Eye for Pharma,
2008.

8)Osterberg L,Blaschke T:Adhierence to medication.N Engl J Med353(5):487-497,2005