看護実習知識集

フレイルを理解して看護計画に活かす

フレイル

フレイルって何?看護実習と関係するの?

フレイルは最近よく耳にするようになった言葉ですが、

超高齢社会の日本において、看護学生は実習のなかで

必ずフレイルの患者さんに出会います。

 

そんな時、フレイルを知っていれば、アセスメントの手助けにもなり、

看護問題や看護目標の立案につながります。

総合的に看護記録の書き方に関して理解を深めてもらえればと思います。

フレイルの歴史

欧米において脆弱な高齢者を表す概念としてFrailtyが提唱されてきました。

日本では2014年日本老年医学会が「フレイルに関するステートメント」の中で

提唱した“Frailty”の日本での呼称フレイル であり、

比較的新しい概念になります。

 

フレイルとは

フレイルとは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、

要介護状態・死亡などの転帰に陥りやすい状態を指します。

 

どうなったらフレイルなの?

 

フレイルの評価法としては、J-CHS基準基本チェックリスト

Frailty lndex臨床虚弱尺度FRAlL-NHがあります。

J-CHS基準

2001年に米国のFriedらが提唱したCardiovascular Health Study(CHS)基準

2020年に日本語版に改訂し修正したものが改訂J-CHS基準になります。

この基準は、身体的フレイルの評価法になります。

 

改訂J-CHS基準の中での5つの評価基準項目は、

体重減少主観的疲労感日常生活活動量の減少

身体能力(歩行速度)の減弱筋力(握力)になります。

 

改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)

項目 評価基準
体重減少 6か月で、2㎏以上の意図しない体重減少
(基本チェックリスト#11)
筋力低下 握力:男性<28㎏、女性<18㎏
疲労感 ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度 通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動 ①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答

表のなかで

3項目以上に該当するものをフレイル(Frail)

1項目または2項目に該当するものをプレフレイル(Prefrail)

いずれも該当しないものを健常(Robust)となります。

 

基本チェックリスト

基本チェックリストは、近い将来に介護が必要となる危険の高い高齢者

抽出するスクリーニング法として開発されました。

2006 年介護保険制度改正の際に、介護予防把握事業の一部として

導入されています。

基本チェックリストは、「はい」または「いいえ」で回答する自記式質問票になり、

日常生活関連動作運動器低栄養状態口腔機能閉じこもり

認知機能抑うつ気分7 領域 25 個の質問群からなっています。

 

基本チェックリスト

No 質問事項 回答(いずれかに〇を付けて下さい)
バスや電車で 1 人で外出していますか 0.はい 1.いいえ
日用品の買い物をしていますか 0.はい 1.いいえ
預貯金の出し入れをしていますか 0.はい 1.いいえ
友人の家を訪ねていますか 0.はい 1.いいえ
家族や友人の相談にのっていますか 0.はい 1.いいえ
階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか 0.はい 1.いいえ
椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか 0.はい 1.いいえ
15 分くらい続けて歩いていますか 0.はい 1.いいえ
この 1 年間に転んだことがありますか 1.はい 0.いいえ
10 転倒に対する不安は大きいですか 1.はい 0.いいえ
11 6 カ月間で 2 ~ 3 kg 以上の体重減少がありましたか 1.はい 0.いいえ
12 BMI=18.5未満が該当する 1.はい 0.いいえ
13 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか 1.はい 0.いいえ
14 お茶や汁物等でむせることがありますか 1.はい 0.いいえ
15 口の渇きが気になりますか 1.はい 0.いいえ
16 週に 1 回以上は外出していますか 0.はい 1.いいえ
17 昨年と比べて外出の回数が減っていますか 1.はい 0.いいえ
18 周りの人から「いつも同じことを聞く」などのもの忘れがあると言われますか 1.はい 0.いいえ
19 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか 0.はい 1.いいえ
20 今日が何月何日かわからない時がありますか 1.はい 0.いいえ
21 (ここ 2 週間)毎日の生活に充実感がない 1.はい 0.いいえ
22 (ここ 2 週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった 1.はい 0.いいえ
23 (ここ 2 週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる 1.はい 0.いいえ
24 (ここ 2 週間)自分が役に立つ人間だと思えない 1.はい 0.いいえ
25 (ここ 2 週間)わけもなく疲れたような感じがする 1.はい 0.いいえ

 

フレイル予防の3つの柱と看護アセスメント

フレイル予防にはバランスよく食事を摂取し、よく歩いて運動をして、

周囲(社会)との関連を保つことが有効と言われています。

 

フレイル予防の3つの柱
  1. 食べることが大切:食・口腔機能を維持し、低栄養を予防する
  2. 動くことが大切:よく体を動かして運動して筋力低下を予防する
  3. 社会参加:色々な人とのつながりがあることで認知症のリスクが低下する

 

フレイル予防である食事を意識した看護アセスメントと看護ケア

食事をしっかりと摂取し、炭水化物やタンパク質、脂質、ビタミン類、

ミネラルを体内に取り入れることが重要です。

 

必要な栄養が摂取できているかどうか、1日に必要な摂取カロリーなどを

計算してアセスメントしていきましょう。

もし摂取できていないようなら嗜好品を確認し、

摂取しやすいものがあれば促していきましょう。

また、栄養補助食品を活用するのも一つの手段になります。

食事摂取が不十分な場合の看護ケアを考えていきましょう。

嗜好品や必要な栄養素の摂取を促す関わりが、個別性のある看護計画につながります。

 

高齢になると歯の欠損咀嚼筋力の低下により、噛む力が弱まります。

また、唾液量の減少嚥下関連の筋肉も低下するため、

摂食・嚥下機能は低下します。

加齢による口腔機能の低下をオーラルフレイルといいます。

介入しないままでいると、むせ込み摂食・嚥下が困難な状況となり、

口腔からの食物摂取ができなくなってしまいます。

パタカラ体操などの口腔機能を維持できるような運動を取り入れて

看護の力でオーラルフレイルを予防していきましょう。

 

フレイル予防である運動を意識した看護アセスメントと看護ケア

 

フレイルの予防には運動が大切です。

前述した改訂日本版フレイル基準にもある通り、

歩行速度の低下」や「活動量の低下」はフレイルにつながります。

運動状況からも看護アセスメントをしていくことが大切です。

 

令和元年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」によると、

60代~70代の高齢者が実施している運動はウォーキング

第1位となっており、多くの高齢者がウォーキングを実施しています。

 

高齢者を対象にウォーキングによる運動介入を行った研究は多くあり、

身体・認知・心理機能にポジティブな影響を与え、

健康増進に有用であると示されています。

 

手軽に実施できるため、受け持ち患者さんの状態を評価して

一緒にウォーキングを実施するのもいい看護ケアになると思います。

 

ウォーキング看護ケアとして考えた場合、以下のような視点が

看護目標にも盛り込めると思います。

 

ウォーキングを実施する目的
  1. 全身持久力、筋力の維持、向上
  2. 軽度認知障害(MCI)の維持、改善
  3. 精神的な気分の安定化

運動強度としては、「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、

65歳以上の高齢者は「毎日40分身体を動かすこと」に加え、

ウォーキングなどの運動習慣を「1回30分以上・週2日以上」実施することが

有効だと言われています。

あくまで受け持ち患者さんのこれまでの活動状況や身体機能を

アセスメントした上で看護計画立案をして、実施を検討してください。

活動レベルがベッド上であればベッド上でできる自動運動他動運動が有効です。

 

フレイル予防である社会参加を意識した看護アセスメントと看護ケア

 

フレイル予防には社会参加も重要です。

社会参加の機会が失われることでの問題点としては、

外出の頻度が減少し、活動レベルが低下することや

他者と関わる機会が減少し、認知機能の低下

うつ病などの精神疾患のリスクも上昇します。

 

老年期は、親しい友人配偶者の死別

疾患などに罹患し、自身の健康機能が

失われていく期間でもあります。そういった時期に

社会との関わりを失うのはフレイルのリスクを高めてしまいます。

 

近所家族との付き合いはどうか、趣味楽しみにしていることはあるか、

ライフストーリーを含めて受け持ち患者さんとコミュニケーションをとり、

生活状況をアセスメントし、看護目標看護計画に反映させていく

必要があります。

 

具体的には、地域の活動ボランティアに参加したり、

家族に会う機会を増やすなど人との交流を増やしていくことが大切です。

 

まとめ

 

フレイル包括的にとらえることが重要であり、

個別の問題包括的な評価の一部であることに留意する必要があります。

 

フレイル予防の3つの柱を意識して、看護目標を考えて

看護計画に反映させていきましょう。

 

フレイルがわかったらアセスメントも深まると思います。

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ここまで読んでくれてありがとうございました。

参考文献

日本老年医学会:フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント,2014.
(https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf)

Satake S and Arai H:Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993

スポーツ庁:令和元年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」について,2020年2月27日発,(検索日2022年11月23日).https://www.mext.go.jp/sports/content/20200507-spt_kensport01-000007034_1.pdf

厚生労働省:「健康づくりのための身体活動基準2013」,12-13P,17P,(検索日2022年11月23日).https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf